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絵本「いっさいはん」のヒットから考える製品戦略

小さい時には、誰しも絵本を読んだことがあるのではないでしょうか。

今は絵本雑誌なるものがあるのですね!
その絵本雑誌が主催する賞の発表が先日ありました。その名も「MOE絵本屋さん大賞」です。


この中で、2位に選ばれた「いっさいはん」という絵本、製品戦略としてみた場合に興味深かったので、少し紹介します。(本のレビューでなく、売り方の話です。)

 

この絵本大賞の位置づけ

この絵本大賞、少数の審査員で決定するのではなく、全国の書店から集めた意見を元に決定している賞のようです。となれば、マーケティング的に成功した作品や、トレンドを押さえた作品が賞をとることになりそうですね。

月刊MOE(モエ)が、全国の絵本専門店・書店の児童書売り場担当者3000人にアンケートを実施し、最も支持された新刊絵本30冊を決定する、年間絵本ランキング。

引用元:“絵本のプロ”が選ぶ新刊絵本は? 「MOE絵本屋さん大賞」 - 朝日新聞デジタル&w

「いっさいはん」のここに注目!

私は、絵本についてはあまり詳しくなかったのですが、たまたまニュースで「いっさいはん」という絵本のことを知りました。この絵本は、作者の子育て経験をもとに、1歳半の子どもの「謎行動」をユーモアを交えて描写した作品です。

表紙はこのような感じです。私も子育ての経験がありますが、このころの子供は大変だけどもかわいいですね。

いっさいはん

さて、この絵本、2017年に売れたようですが、2つの点で面白いと思いました。

リーンスタートアップ的な成り立ち

通常の絵本の作り方と違い、ツイッターへの投稿をきっかけにして、絵本化されたとのこと。ニュース記事では、以下のように書かれています。

第2位を受賞したminchiさんの『いっさいはん』(岩崎書店)は、新人賞の第1位とのダブル受賞。ツイッターに投稿していたイラストが反響を呼び、絵本化された話題作です。

引用元:“絵本のプロ”が選ぶ新刊絵本は? 「MOE絵本屋さん大賞」 - 朝日新聞デジタル&w

月刊MOEの2月号に、もう少し詳しい作者へのインタビュー記事がありました。
該当箇所を引用します。

もともと育児ブログで絵日記を描いたことがきっかけです。でも、そのときはたいした反響もなく、子育ても手がいっぱいで、すぐにやめてしまったんですよね。2年ほど前、ふと思い出してtwitterにアップしてみたら、今度はたくさんの方からリツイートがあって。それから「絵本をつくりませんか」というお話をいただきました。

引用元:MOE (モエ) 2018年2月号[雑誌] 

なんと、昔にブログにアップしていたものが、後になって花開いたのですね。すごい!

SNSでの反響がきっかけということなので、まさにリーンスタートアップ的な市場開拓に近いですね。最近、米国における技術書の出版でも、Webでプロトタイプを公開しながら立ち上げるケースもあります。

「いっさいはん」では、ブログとツイッターの投稿が、まさにプロトタイプだったというわけです。

ターゲティングと販売チャネルが同一に! 絶妙な製品戦略

皆さん、絵本は誰が読むものだと思いますか?
普通の絵本だと、園児や小学生など、小さなお子さんがターゲットになりますよね。

一方、この絵本のターゲットは、子どもではなく子育て中の親です。
子育て系の本ということですね。

自身の育児を通して、子どもの「面白いな」「変だな」と思うことをイラストに描いて投稿していたら、子育て中の人たちから大きな反響があったというminchiさん。

引用元:“絵本のプロ”が選ぶ新刊絵本は? 「MOE絵本屋さん大賞」 - 朝日新聞デジタル&w

子育て系の本では、親が手に取ったときに「あるある」と共感することが、購買の動機になります。似たようなジャンルで思いつくのは、「うちの3姉妹」などでしょうか。ところが、「いっさいはん」は絵本になるので、うちの3姉妹と違って本屋の絵本売り場に置かれることになります。

絵本を読むのは子どもたちですが、その購買の意思決定者は保護者たる親ですね。したがって、絵本売り場には親も一緒に来ることになります。

つまり、今回の「いっさいはん」は、ターゲットである親が足を運ぶ場所に、首尾よく並んでいることなります!
これは、絶妙な策といえるのではないでしょうか。

更にすごいと思うのは、子育て中の親は忙しいので、本屋に行っても自分の本を選ぶ時間はあまりありません。本屋に行くとしたら、主に子どものための本を探しにいくことが多いはずです。そこで訪れた絵本コーナーに、子育てにかかわる本が置いてあったならどうでしょう?

集客としては大変よくできた戦略ではないでしょうか。

このことに気づいたとき、昔読んだ本のエピソードを思い出しました。世界屈指の紳士服メーカーPVHの元CEOが書いた自伝に載っていた、「真の顧客に気づけ」という話です。

驚きの事実を知ったのは、雑誌『ヴォーグ』編集者と話していたときのことだ。
なんと、男性のシャツのおよそ七割が、女性によって購入されているか選ばれているのだという。実際の顧客は、大半が女性だったのだ

引用元: ルイ・ヴィトン元CEOが教える 出世の極意 ※太字も本文より

著者のマーク・ウェバー氏は、上のことに気づいて実際にプロモーション戦略を変更し、売上を拡大することに成功します。

「いっさいはん」のサクセスストーリーも含め、真の購買層を捉えるというのは、実に大切なことだと感じました。

まさに、プロダクトマネージャーが製品戦略を考える上で、大切なことだと思います。

 

 

いっさいはん

いっさいはん