スーツ姿のプロダクトマネージャー

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たまには仕事に関係のない本を読んでみる 本の波をうろうろする方法

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私が購入する本の大半は「仕事」にかかわる本です。

機械学習の技術書や経営戦略やマネジメントなどのビジネス本など、やっている仕事とやりたい仕事を中心にして、たくさんの本を読んでいます。一言でいうと知りたがりなので、仕事でわからないことや疑問点があると、ついつい本屋に行ってしまうのです。

でも、あまり同じジャンルの本ばかり買っていると、自分の考えが凝り固まってくるように感じます。そんな時には、仕事に直接関係がない分野にも手を伸ばして、考え方を広げるようにしています。本が好きという軸は変わらないのですが…。

 

 

 

どうやって本の波の中をぶらぶらするか

あまりにも興味がない分野の本を買ってしまうと、積読で終わってしまうので、少しでも自分の何かに引っかかった本を選ぶようにしています。

この時には、ビジネス本とちがって、「この本を読む目的を明確にしてから読む」なんてことは考えません。なので、できるだけ肩の力を抜いて、純粋に興味とか野次馬的な感覚で無駄を覚悟して本を買うようにしています。

こうしていると、たまに自分では気づかなかったジャンルの本に出会うことができます。どうやって見つけるかというのは難しいのですが、ランダム性と自分の意思をミックスさせる意味で、以下のような方策をとっています。

  • 本屋や図書館をぶらぶらしながら、できるだけいつも行かないジャンルの棚を眺めて回る。タイトルや装丁が気になったら手に取ってみる。
  • 本屋で新書や古典系の文庫の棚を見る。それを見ながら目に飛び込んできた本が、なんとなく気になっている分野なのかもしれない。
  • ニュースとかブログを見て、気になるキーワードがあったらAmazonで検索してみる。レビュー数が多くて気になった本をほしいものリストにとりあえず入れる。
  • 世間で起こった事件や自分に遭遇した出来事で、自分の理解を越えた何かがあったときには、とりあえず調べてみる。
  • 定期的に社外の友人や、職種が違う友人と会話をする。そして、面白い本はないかと聞いてみる。
  • 美術館とか博物館に行ったときに、売店で売っている本を見てみる。

 

たまたま出会った仕事に関係のない有意義だった本

こんな風にして、たまに面白い本に出会うことができたり、まったく期待していなかったのに、後々仕事と繋がるといったことが起きます。

この中から、印象深い本をいくつか紹介します。

アトピーの原因が知りたくて買った「免疫の意味論」

私はアトピー持ちで、重症ではないものの、症状のコントロールができない時期がありました。ひどいときには、Yシャツの襟が血で汚れてしまうほど掻いてしまうので、困っていました。しかし、病院に通ってもステロイド剤がでるばかりで、根本的な治療に繋がりませんでした。

 

そこで、東洋系の病院に行って漢方を試したのですが、副作用が出て断念。もとの病院に戻ると、先生から「あなたは軽度なのだから、『ひどくなったので来ました』とか言わないように」と言われて、しょんぼりしました。

こうした治療を続ける中で、そもそもアトピーってなんだろう思って、いろいろと調べはじめました。その中で、どうやら免疫にかかわる病気だろうということがわかり、じゃあ免疫って何なの?ということで、この本に出会いました。

この本は、タイトルに「意味論」とつくように、少し哲学的な問いを投げかける本でもあります。免疫は自分を守るために作用するものであるのに、ある時には自分自身を攻撃してしまいます。そして、時には自分の脳も攻撃してしまうということで、そもそも自己と何だという問いを突きつけられます。実にエキサイティングな展開をする本でした。

メカニズムの一部はわかっているものの、根本的な何かというのは、まだわかっていないことが多いのだと感じました。また、免疫のメカニズム自体も面白く、よく考えられたものだなと思いました。誰が設計したのでしょうか…。

私は、生物とか有機物が好きではないので、自分がアトピーにならなかったらこの本は買わなかったでしょう。それから、病気の治療の面で言えば、原理がわかっていないのですから、実直に対処療法と生活環境の改善を続けるしかないと悟ったのでした。

その後、定評のある医学書を買って読み、医師の指導に素直に従うことにしました。おかげで、今はある程度コントロールできています。

普通はこんな一般向けでない本は買わないのでしょうけど、あの時は何かにすがりたかったのですね。結果的には、良かったと思っています。

さて、本書はある意味哲学です。哲学というのは自分との対峙とも言うべき重厚な問いに満ちています。こうした世界を知ることで、自分の視野が広がりました。また、人というものは、科学が発達したこの世界においても、自分のことや世界のことをあまり知らないものだと感じました。

そう考えると、データサイエンスで取り扱う「ビッグデータ」というものが、いかに限定された情報であるかと思わずにはいられません。

 

歴史に興味のない私が読めた「歴史は『べき乗則』で動く」 

私は昔から歴史が苦手でした。今は少し違うのかもしれませんが、中学・高校とひたすら人名を暗記させられたのが苦痛で仕方なかったのです。それから、昔話もあまり好きでなく、できれば技術とか未来のことを考えていたい方なので、より一層歴史から遠のいていってしまうのです。

しかし、「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ。」という言葉もあるように、この不安定な世の不可解な事象の奥底を見ようとすると、歴史を学びたくなってきます。

このように、歴史は嫌いだけど歴史を知りたい…という自分の無茶な要求に答えるべく、本屋をウロウロしていたところ、文庫のコーナーで見つけたのが本書です。興味を引いたのは「複雑系」という言葉で、学生時代に妙に興味があったのを思い出したのでした。

べき乗則とは、はてなキーワードによると「ある観測量がパラメータのべき乗に比例することを指す」とのことです。何らかの現象を説明するために、べき乗の関数を用いる統計モデルのことです。このように書くと、数学数学していて無味乾燥ですが、株価の暴落や、ソーシャルメディアのバースト的な盛り上がりなど、実世界のいたるところでこの現象がみられるという話です。

本書では、これを歴史の出来事に照らしていろいろと説明していきます。説明も面白いのですが、べき乗則で記述される現象というのは、予測ができないということが面白いところです。つまり、歴史の転換点というのは、誰も予測ができないのかもしれません。

となると、歴史に学べというのは周期性を勉強せよというよりも、ずっと定性的で予測不可能の世界があることを知りなさいということかもしれません。

このような現象は、その系の中でフィードバックを繰り返すことで創発的かつ極端なことが起きてしまうことがその原因となっているようです。これが面白いのは、このような現象が常に起きているわけではなく、あるとき急に起きるということです。

こんなことを考えながら歴史や世の中を見ていくと、諸行無常であることを感じずにはいられません。そして、さらなる深淵を覗きたくなり、経済の本を手に取るようになりました。例えばこんな本です。

さて、本書で得られた一番の教訓は、自身の興味を起点とすれば、苦手な分野にも手を出せるという意味で成長できるということでした。そして、小さな点からスタートして興味の糸をたどることで、思いもよらなかったことを学ぶことができることを実感しました。この本を読まなければ、バブル経済や国家の崩壊に興味を持つことはなかったでしょう。

また、もう一つの教訓としては、この世には数学的には予測できない事象があることを知ったことです。いわゆるブラックスワンの話です。

こうした世界において、データサイエンティストとして機械学習という過去のデータに依存する武器でどこまで戦えるのか、またプロダクトマネージャーとして不確実性とどう戦うかというのは、自分自身の生涯のテーマであります。

 

ふと「般若心経って何だろう」と思ったので読んでみた

この手の分野に手を出すとは思っていませんでした。

きっかけは、土日になると新興宗教の勧誘がやってくることでした。正直興味がなかったので丁重にお断りしていたのですが、ふと「ウチの実家は何宗だっけ?」と思ったのです。いい歳してそれも知らないのか…とお叱りを受けそうですが、冠婚葬祭やお盆の時くらいしか意識していなかったので、ちょっと調べようと思ったのです。

まず、仏教についてググってみると、たくさんの種類があるではありませんか。そこで、仏教の入門書を読んでみましたが、下地がないのでよくわかりません。もちろん、中学生のころの歴史の知識はすっかりなくなっています。情報としていろいろ書かれていても、歴史に興味がないのと同じで入ってこないのです。

そこで、原典をあたることにしました。実家の仏壇を思い出してみると、なんとなく般若心経があったような記憶がありました。そこで、いろいろすっとばして岩波文庫の般若心経を読んでみることにしたのです。

般若心経は大変短いお経で、すぐ読み終わったのですがなかなか理解しにくい内容でした。そこで何度か読み返してみると、なんというか量子力学にも似た世界観があるような気がしてきました。また、最後の有名な「ぎゃーてーぎゃーてー…」という一節が一種のマントラであることを知り、大乗仏教から上座部仏教(小乗仏教)に興味を移しました。そこで、どんどん古い本に手を出していきました。また、仏教に限らず中国や西洋の古典も読むようになりました。

気が付くと、本棚が岩波文庫でいっぱいになっていました。古くからあるいろいろな考え方、コンセプトに素直に唸らされることになりました。

般若心経をはじめとして、これらの本から学んだことを一言でいうのは大変難しいです。古典は読みにくいのですが、時の試練を越えて生き残っている本には、確かに読む価値のある知恵が詰まっていました。

読んでいるときの状況や、年齢によって受け取り方が変わるのも特徴で、これらの古典というのは一生付き合える本だと思います。

まさに、古典と付き合うきっかけを与えてくれたというのが本書の最大の収穫です。

というわけで、今は以下の本を読んでいます。

歴史嫌いな私がこれを読むことになるとは、思っていませんでした。

 

無意識について知りたくなって読んだ「サブリミナル・マインド」

一時期、「無意識」というのもに興味を持った時期がありました。

無意識、潜在意識というキーワードが速読や自己啓発書によく出てくるので、無意識というのは心理学的には一体どう扱われているのか?と気になったのです。そこで、いろいろググってみて、面白そうな本だなと思って本書を買いました。

新書ということもあって軽い気持ちで読み始めたのですが、予想外に密度の濃い内容でした。数時間で読めるような新書とは一線を画します。実に考えさせられるテーマで、初めから引き込まれていきました。

本書で取り上げるテーマは無意識ですが、その上でわれわれに問いかけるのは「自分の心は自分が一番よく知っている」という考えの真偽です。こうしたふわっとしてしまいそうなテーマを、科学的実験から得られた研究成果を元に、徹底的に議論してきます。そのようにして出される考察は、私にとっては意外性のあるものでした。非常に面白いのですが、結論をポンと言われてもつまらなくなるだけなので、興味のある方はぜひ読んでみてください。

 

このようなことをきっかけに、心理学に興味を持つことになりました。といっても、心理をテーマにしたビジネス本ではなく、アカデミック色の強い定番本を選ぶようにしました。こんな本です。

これらの本で得られる知見は、ここで取り上げたサブリミナル・マインドとは違うものもあります。マズローの「人間性の心理学」は、組織論でも出てくる要求の5段階説で有名です。しかし、むしろ私は人の心理というのはどうなっているのか、自己というものへの興味の方が先に立っていて、こうした本を読んでいます。

結局、自分で自分のことが一番わからないものだ、ということがわかりました。

 

絵も描けないのに「デザイン」に憧れて買ったデザインの本

デザイン、デザイナーという言葉には、昔から何かしらの憧れがありました。

ここでいうデザインは、システム設計(UX)や最近はやりのデザイン思考という意味でのデザインではなく、工業的なデザインの話です。自分にそういったセンスがないので、余計に気になるのでしょう。

システム開発やWebデザインなどの知見を得るなら、著名な「誰のためのデザイン?」や「ノンデザイナーズ・デザインブック」がよいと思います。私自身もこれらの本にはお世話になりました。でも、プロのデザイナーでも読みそうな本がどうしても欲しくなって、購入したのが本書です。

本書では、デザインの原則が簡素な説明の実例のセットになって、カタログ的に紹介されている本です。私が買ったのは第1版で100事例が載っていましたが、第2版ではさらに追加されているようです。この本に載っている原則というのは、グラフィックデザインを勉強された方には、当たり前の話なのでしょう。しかし、義務教育の間しか美術を習っていない私にとっては、知らないことが満載でした。

手取り足取りという本ではないので、実務ですぐ使えるかといえばよくわかりません。実際に、長らく職場の机の上に並べてきましたが、手に取る回数は圧倒的に少なかったです。しかし、何度も触れて時々パラパラめくっていることで、その考え方が何かしら自分の中に入ってきているのだなと実感することがあります。

 

この本のように、単純なハウツーでない「感性のストック」となり得る本を持っておくのは、長期的な観点で役に立つことがあります。それ以上に、仕事とまったく違う世界に触れて刺激を受けることは、純粋に楽しいものです。

 

科学者の頭の中を探る「科学者という仕事」

以前、SE職から研究職に社内天職したことがあります。そのことの様子はここに書きました。

研究職に必要な新しいマインドセットを獲得するため、そもそも研究者は何を考えて仕事をしているのか知るために、たくさんの本を読みました。

本書はその中で出会った本であり、ある意味仕事のために買ったと言えるのですが、きちんと読んだのは研究所を出てからです。当時は、自分と本書で描かれている純粋な研究者像とのギャップが大きすぎて、すぐに読むのをやめてしまったのです。

この本と向き合ったのは、研究所を出てマーケティングという180度違ったポジションに身を置いていたときです。いったん読み始めると、第一線で奮闘する科学者のマインド、モチベーション、見ている世界を垣間見ることができる内容で、一気に最後まで読みました。特に、科学者がいかにして創造的な仕事を成し遂げているのかということが、ずっしりとした重みのある言葉で語られています。

ここで語られる創造性の秘訣は、徹底した「個」へのこだわりです。他人と群れず模倣でなくオリジナリティを個が追及することでしか、創造的な仕事はできないと言い切っています。

 

ダイバーシティが叫ばれる今日、皆さんはこのことをどう思いますか? 本書ではありませんが、デカルト方法序説の中で似たようなことを言っています。

私は、薄々ではありますが、本書で語っている通りではないかと思ってきました。例えば、新製品の開発でいくら多様性のあるチームを組んでも、その製品の機能やUX、ターゲット市場の選定は、プロダクトマネージャーが意思決定しなければならないからです。

 

この本は科学者に焦点を当てた本ですが、様々な分野で創造の最前線で戦ってきた人がいます。

どの本を読んでも圧倒されますね。

 

日常生活で触れることのない世界に触れる

正直にいうと、この本は今は持っていません。しかし、神保町の古本屋や大型書店に行くたびに、つい探してしまう本です。

学生のころにとある事情で量子力学を勉強することになり、文字通り格闘した本です。情報工学専攻でソフトウェア系の研究室に在籍していた身としては、かなり特殊といえるでしょう。

量子力学は、とてもとても小さな世界で成り立つ物理法則を扱う科学です。われわれが住んでいる世界とはずいぶん違うことが起きているようなので、初めて学んだときには正直面喰いました。観測するまでは複数の状態を並列に保有していて、観測された瞬間に状態が確率的に収縮する…なんて、まったく想像できませんでした。

いろいろな入門書を読み漁りました。しかし、一向に理解進まず、読めば読むほどわからないことだらけになっていきました。ある意味、量子力学は哲学的というか認識論というか、日常生活からかけ離れた概念を示してきます。更に悪いことに、解析があまり好きではなかったので、数学から原理を頭に入れるというのもつらいところでした。

このような状況を打開すべく読んだのがディラックの本です。ディラック量子力学は、文章での説明が丁寧であり、さらに代数的なものさしで説明されるところがあるので、相性がよいところがありました。素直に言って、深いところや細かな定理は理解できていません。しかし、当時の研究テーマとしていた「量子コンピュータ」の考え方を学ぶには十分な理解を得ることができました。そこで、私の量子力学への探求はいったん終わったのです。

今回ご紹介したディラックファインマンの教科書は、物理学を学ぶ学生が読むような本です。その筋の人には定番の参考書であっても、私のように専門がかすりもしない人にとっては、圧倒されてしまうような本です。しかし、欧米の教科書というのは、わかりやすい事例を使って難しいコンセプトの本質を理解させることに注力します。そして、だんだんと複雑な命題や定義に進んでいきます。

それでも難易度が高いのですが、何度も読んで考えて、わからなくなって疲れて寝てしまい、嫌になって止めたり再開したり…ということを続けているうちに、ポンとわかる瞬間があったのです。安堵と興奮が入り混じったなんとも言い難い気持ちになりました。

 

このような「わかった」という瞬間というのは、学問に限らず芸術や仕事でもありました。私は、いつもその瞬間に出会うために「厄介な道」を選んでしまう傾向にあります。そこに至る道は正直しんどいので、道半ばではまたやってしまったと少し後悔します。しかし、終わった後はすっかりいい気分になっていて、思い出補正も助けもあって、マンネリを打開すべく火中に飛び込んでしまうのです。

さて、このような難解なループの楽しさを生まれてから初めに教えてくれたのは、他ならぬ量子力学の本です。特にディラックの本は、当時の先生が学生時代に使っていたという古い本をお借りして恭しく読ませていただき、思い出深い本です。復刻と絶版を繰り返している本で、いつも買い時を逃していました。また新しく出版されたようのなので、今度こそキャッチします。

 

さて、今の仕事にまったく関係のない「難解なコンセプト」に触れるというのは、趣味にしてもリーズナブルではありません。時間が限られる日常の中で、難解な本を読むのは正直骨が折れます。理解のできない一文とにらめっこするのも、仕事ならまだしも趣味というにはどうかとも思います。しかし、あの「わかった」という瞬間に会いたくて、またアカデミックな香りに触れたくて、ついつい踏み入れてしまうのです。

というわけで、仕事を始めてから手を出した難解なコンセプトとして、以下のような本に手を出しています。

進捗は思わしくないのですが、趣味ならいいですよね。仕事に直接関係ないというのが、プレッシャーにならずに楽しめて良いです。

 

肩の力を抜いて本を読む

私が個人的に面白いと思った本を、つらつらと書いてきました。

結果的に仕事に繋がるかどうかは、正直わかりませんが、ずっと後になって繋がるときもあります。

教養としてリベラルアーツ的な学びを求めて本を買っても、私の場合は興味がなければ長続きしませんでした。そこで、このエントリーで紹介したように、少しでも気になった何かをきっかけとして、間口を広げるような工夫をしました。

また、あえて仕事に直結しないテーマを選ぶことで、肩の力を抜いて読むことができるのもよかったです。

 

以上、仕事に関係のない本についてのご紹介でした。