スーツ姿のプロダクトマネージャー

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プロダクトマネージャーは市場と技術とビジネスの間で仕事をする

プロダクトマネージャーの仕事は具体的にどのようなポジションで、どのような仕事をするのでしょうか。まずはいくつかの定義から引用してみます。

まず、Wikipediaから。日本語のサイトでの定義はさっぱりしていますね…。まぁ、とても広いタスクを担うことはわかるかと思います。

プロダクトマネージャーとは経営学用語の一つ。企業においてマーケティング活動全般の権限と責任を持つ管理者を担当する職種を言う。ここで言われている権限というのは製品の開発から、その製品の宣伝、販売、流通などの広範囲にわたっている。

出典: プロダクトマネージャー - Wikipedia

次に、日本語で読める書籍から引用しつつ、もう少し深く見ていきます。

 

PMの職責とは、チームが優れたプロダクトを出荷できるようにすることです。プロダクトマネージャーは、プロダクトのミニCEOのようなものだ、という人もいるでしょう。これは、ある意味では正確です。(中略)

プロダクトマネージャーは、顧客側に立つ人です。顧客ニーズを知り、そのニーズをプロダクトのゴールと機能に翻訳します。それから、その機能をきちんとまとめて適切にデザインされた形で組み込み、顧客のニーズを実際に解決します。

出典:世界で闘うプロダクトマネジャーになるための本, Gayle Laakmann McDowell, Jackie Bavaro, マイナビ, 2014

 

 

重量級プロダクトマネージャーは、事業戦略家であると同時に優秀な実践者でもある。担当する製品を通して顧客の満足を積み重ね、最終的には利益を上げなければならない。

出典:プロダクトマネジャーの教科書, Linda Gorchels, 翔泳社, 2006

 

前者はGoogleなどのWeb系企業におけるサービス開発の担当者を想定した書籍です。後者は特定の業種に特化したものではありませんが、一般的な製造業を中心に議論されています。どちらとも、単なる開発マネジメントの枠を超えたポジションであり、ある意味事業戦略と同義に近い立場で一つの製品を作り上げる責務を負うことを示唆しています。

これは、私の経験からいっても正しいと思います。ところで、重要な観点として、どちらとも「ミニCEO」とか「事業戦略家」といいつつ、CEOや事業戦略幹部とは言い切っていません。それはなぜでしょうか?

直接権限のないメンバーと一緒に製品を世に出す

それは、プロダクトマネージャーは、関係するメンバー、例えばエンジニアなどに対して人事上の権限を持たない場合が多いからです。先ほど引用した書籍でも、それぞれ以下のように述べられています。しかも、かなり早い段階でこの説明があり、その重要性がうかがえます。

しかし、プロダクトマネージャーをCEOと表現すると、最も重要なポイントのひとつを見失ってしまいます。それは、プロダクトマネージャーは、チームのメンバーに対して直接の権限を持たないということです。

出典:世界で闘うプロダクトマネジャーになるための本, Gayle Laakmann McDowell, Jackie Bavaro, マイナビ, 2014

 

また、そのようなプロセスを直接的な権限を持っていない人たちをまとめながら進めなくてはならない。

出典:プロダクトマネジャーの教科書, Linda Gorchels, 翔泳社, 2006

 

直接権限がないのに、一緒にチームを組んで、時には世の中にインパクトを与える製品を送り出し、その損益に責任を持つ。一般的な国内企業で働いている方からすると、少し想像しにくいのではないでしょうか。

ラインとプロジェクトを併設するマトリックス型組織における、単発SIプロジェクトの組み方に似ているかもしれません。しかし、プロダクトマネージャーの場合は、中期的に損益の責務を負うので、SIのプロジェクトマネージャーが見ている視点とはかなり違います。

いくつかの違いがあるのですが、特に重要な違いについて更に掘り下げます。

市場と技術とビジネスの間で仕事をする

世の中に魅力のある製品を送り出すためには、顧客を満足させなければなりません。そして、製品である以上、一人のユーザだけでなく複数のユーザを相手に売っていく必要があります。すなわち、プロダクトマネージャーは、マーケティング的な発想と事業戦略的な発想をミックスできる人です。これは、SIなどにおけるプロジェクトマネージャーとは異なる特性です。

また、前述のように、直接権限を持たないとしても、開発チームを引っ張る役割を果たしつつ損益に責任を持ちます。この点で、国内企業によく見られるような調整役としての企画部門やマーケティング担当者の仕事とも、一線を画します。

プロダクトマネージャーがとても魅力的なキャリアである理由のひとつは、テクノロジー、ビジネス、デザインの交差点で仕事ができるということです。あなたは多くの役割をこなし、複数の視点を身につけていくことになります。

出典:世界で闘うプロダクトマネジャーになるための本, Gayle Laakmann McDowell, Jackie Bavaro, マイナビ, 2014

 

プロダクトマネージャーのタスクは、新製品開発プロセスのあらゆる部分に及ぶ。実際、重量級プロダクトマネージャーは、顧客、マーケティング担当者、エンジニア、デザイナーの言語を使いこなせる「マルチリンガル」でなければならない。

出典:プロダクトマネジャーの教科書, Linda Gorchels, 翔泳社, 2006 の中の引用文を掲載。原著は「"The Power of Product Integrity", Clark and Fujimoto, HBR, 1990」

 

私の考えはこうです。とても面白い仕事だと思いませんか?

  • プロダクトマネージャーは、市場と技術とビジネスの間に立ち、市場のニーズを先取りしながら技術リソースを活用した製品を開発し、自社ビジネスの優位性に貢献すべくその損益に責任を持つ。(下図参照)

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プロダクトマネージャーの立ち位置

キャズムを乗り越えるために必要な人材

ところで、国内でも増えてきたIT系のスタートアップでは、当初はCEOやCTOがその役目を担うことになると思います。しかし、ある程度ビジネスが立ち上がってくると、プロダクトマネージャーの存在が重要になってくるはずです。たとえば、ハイテクベンチャー向けのマーケティング書籍としてバイブル的な存在の「キャズム」では、製品が普及するか否かの重要な局面の話として、以下のように書かれています。

社内においても特命を帯びる職務がある。それは、ホールプロダクト・マネージャーであり、キャズムを越えるときのみ必要とされる職務である。

出典:キャズム Ver.2 増補改訂版, Geoffrey A. Moore, 翔泳社, 2014

新しい製品が少しずつ売れ始めた時というのは、市場の中で比較的先進的なユーザがその製品を利用を始めた状態です。しかし、その後急速に市場が立ち上がるにつれて、購買層が変わってきます。このとき、尖った機能の開発だけでなく、サポートや品質の面で様々な問題が顕在化してくることになります。また、同時に市場と競合からのプレッシャーが強くなるため、これらを統合的に見て意思を持って判断する人物が必要になるのです。この段階では損益的に厳しい状況が続きますから、ビジネス面で柔軟な判断をしつつ、リーダーシップを持ってチームを引っ張らなければなりません。

この人物を、ジェフリー・ムーアは「ホールプロダクト・マネージャー」と定義しました。

私も、過去に「プロダクトマネージャー」の経験をしたと書きましたが、まさに上の状況と似ている局面で、市場の期待と製品の問題が噴出した時期でした。振り返れば大変有意義で思いに満ちた仕事でしたが、常に製品のことばかり考えていた時期でもありました。*1

今日本では、スタートアップのみならず、既存の大きな企業でも新しい製品を出して行こうとしています。そして、その多くがIT、特にAI・機械学習のような新しい技術を活用したものであるように思えます。

この変革期にこそ、プロダクトマネージャーという職務、人材が必要なのではないでしょうか。

 

世界で闘うプロダクトマネジャーになるための本 ~トップIT企業のPMとして就職する方法~

世界で闘うプロダクトマネジャーになるための本 ~トップIT企業のPMとして就職する方法~

 
プロダクトマネジャーの教科書

プロダクトマネジャーの教科書

 

 

*1:しかも、古い体質の国内IT企業にあって新卒3年目でそれを任されたというのは、偶然が重なった幸運としか言えません。売上が小さく今後どうなるかわからない製品だったからこそ、チャンスがめぐってきたのだと思います。