スーツ姿のプロダクトマネージャー

ITで新しいプロダクトを生み出したいすべての人を応援するブログです。

プロダクトマネージャーが持つべきマーケティングの視点

前回のエントリーで、プロダクトマネージャーは市場と技術とビジネスの間で仕事をすると書きました。ここで、もっとも重要な観点は「市場」であり、必然的にプロジェクトマネージャーはマーケティング的な視点を持って仕事をする必要があります。

プロダクトマネージャーが持つべきマーケティングの視点とはいったいどのようなものでしょうか?

f:id:ku2t:20180228175828j:plain

 

日々マーケティングの視点を持って意思決定する

一般的に「マーケティング」というと、どんな印象を持つでしょうか?

広告を打つこと、市場を調査すること、また最近ではA/Bテスト等データサイエンスを活用したグロースハック的な施策をイメージする人も多いのではないでしょうか。これらは重要な要素ですが、プロダクトマネジメントを行う上では、

  • 市場調査は、戦略を決めるときに実施するタスクのひとつ
  • 広告やA/Bテストは、製品のリリース前後で市場に売り込んだり改善を行ったりするためのタスクのひとつ

であり、重要でありますが個々の作業のように思えます。プロジェクトマネージャーはより大きな視点、「製品戦略」の一部としてマーケティングの視点を獲得しておく必要があります。そして、製品の機能検討、デザイン、プロモーションなどにおいて、市場を意識した意思決定を行えるようになる必要があります。技術を意識するのではなく。

具体的には、製品を作る前、作る時、作ってリリースした後、作り変えるときのすべてにおいて、マーケティング的な視点を持って日々のタスクを決断していかなければなりません。例えば、小さな機能の一つを入れるか入れないか…ということを検討する場合でも、常に市場を意識する必要があります。

ここで、「顧客」ではなく「市場」という言葉を使ったことが肝になります。顧客が大切であることは疑いのないことですが、常に目の前の顧客が正解を教えてくれるとは限りません。そのため、市場を見る目としてマーケティングの視点が必要になるのです。いわば、ハンターのように広く目を光らせて、売れる製品を作っていくのです。

どうやって学ぶのか?

私にマーケティングの重要性を教えてくれたのは、会社に入ったときに独身寮にいた先輩でした。*1

その先輩はコンサル系の部門に所属していましたが、私がソフトウェアの製品開発部隊に配属することになったと伝えると、

ちゃんマーケティングの勉強をしなさい。うちの会社は売れない製品ばっかりだから。コトラーだけ読んでもだめだよ。

と諭されました。当時、私は情報工学系を出たばかりのシステムエンジニアだったので、「マーケティング」も「コトラー」も知りませんでした。弱気な私はいろいろ不安になって本屋をめぐり、いくつかの本を購入し読むことにしました。

こんな本です。

マーケティングカフェ―ビジネスは、こんなふうに始まる。

マーケティングカフェ―ビジネスは、こんなふうに始まる。

 
コトラーの戦略的マーケティング―いかに市場を創造し、攻略し、支配するか

コトラーの戦略的マーケティング―いかに市場を創造し、攻略し、支配するか

 
戦略シナリオのノウハウ・ドゥハウ (PHPビジネス選書)

戦略シナリオのノウハウ・ドゥハウ (PHPビジネス選書)

 

 

新人でビジネス経験が乏しい状態でこれらの本を読んでも、いまいち入ってきませんでした。その後、プロダクトマネージャーをやることになったときに、何度も読み返すことになりました。

しかし、当時、マーケティングの本で取り上げられる話の多くが、一般消費者向けの消費財や自動車などの製品を意識したものであり、ITのソフトウェアの製品戦略を考える上では、少しわかりにくかったことも事実でした。

私は、断片的だったマーケティングの知識を、日々のビジネスで実践していくことで、徐々にその視点を獲得していくことができました。そうすることで、製品戦略の一部としてマーケティングを捉えるようになりました。

製品戦略の一部としてのマーケティングとは?

では、製品戦略の一部としてのマーケティングとはどういう意味でしょうか?

マーケティングには様々な考え方がありますが、古典的な方法として、

  1. 市場を調査し市場を細分化する(セグメンテーション)
  2. ターゲットとするセグメントを決定する(ターゲティング)
  3. 競合との差別化を図るための立ち位置を決定する(ポジショニング)
  4. マーケティングミックスを実行する:製品、価格、チャネル、プロモーション
  5. 状況をモニタリングし、コントロールする

というようなプロセスがあります。ここで、製品戦略が戦術的な位置づけであるマーケティングミックスの一部として説明されることがよくあります。

一方、製品戦略の一部としてのマーケティングは、以下のように製品企画から開発、リリース後の様々な場面で登場します。したがって、プロダクトマネージャーにとっては、製品戦略という考え方が中心にあり、それを支える手段として様々なマーケティングの道具があると考えてよいでしょう。また、最近増えてきている、新製品や新ビジネスを立ち上げるタスクのマネージャーや担当者も同様だと思います。

  1. 新製品の企画: 市場分析、ターゲティング
  2. 競争戦略の立案: 環境分析、競合分析、ポジショニング
  3. 製品開発のプロセス: テストマーケティング、ホールプロダクト戦略
  4. 製品シェア拡大の施策: ブランディングキャズム(イノベータの理論)
  5. 事業レベルでの戦略: ポートフォリオ戦略

上にあげた2つの考え方を比べると、単に位置づけの違いのように見えるかもしれません。

しかし、プロダクトマネージャーは、マーケティングプロセスの一部として開発を担うのではなく、製品企画という入口から投資回収という出口まで一貫して責務を負います。したがって、このようなものの見方は非常に重要です。

また、リーンスタートアップのように市場起点で、市場開拓と開発を同時に練り上げる手法が使われるようになり、ますますマーケティングはすべてのタスクに溶け込んでいます。

 

このように、プロダクトマネージャーは製品戦略とマーケティングを絡めて勉強する必要があります。見方を変えると、プロダクトマネージャーは、事業部長のような大きな職位につく前に、ひとつの製品レベルで事業戦略にも匹敵する視点を獲得できるチャンスがあるということです。ワクワクしますよね。

 このような考え方を直接的に教えてくれるような書籍は少ないです。以下のような本が参考になると思います。

 

コトラーの戦略的マーケティング―いかに市場を創造し、攻略し、支配するか

コトラーの戦略的マーケティング―いかに市場を創造し、攻略し、支配するか

 
プロダクトマネジャーの教科書

プロダクトマネジャーの教科書

 
Product Management For Dummies (For Dummies (Business & Personal Finance))

Product Management For Dummies (For Dummies (Business & Personal Finance))

 

 

*1:今はもう独身寮のような制度はなくなってきましたが、当時はあったのです。